ONE POINT

ワンポイントアドバイス

顎の成長

~母乳育児~

歯並びは歯の大きさと顎の大きさのバランスで決ります。
最近は顎が小さくて歯並びが悪くなってしまうお子さんが増えているようです。
顎が小さいと歯並びが悪くなるだけでなく舌の入る空間が狭くなり呼吸しにくくなったり睡眠時無呼吸症候群の原因の一つになったりします。
顎の十分な発育は健康のためにも大切です。
硬い物を食べれば顎が発育するのではなく、成長の過程で適切な時期に適切な顎の使い方をすることで顎は発育していきます。
出生7日頃から1カ月位の間の成長量が最も大きく、次に乳歯や永久歯が出る時期にも大きく成長します。
赤ちゃんは、乳首を上顎と舌の間ではさみ『噛みこむ』ことで母乳を飲みます。
舌が上顎を押す圧力が上顎の発達を促します、また下顎で『噛みこむ』ことが咬む筋肉を発達させます。
『噛みこむ力』を新生児期にきちんと獲得することはとても重要です。
上手に母乳が飲めないと体重が増えないだけでなく顎も充分に成長できません。
哺乳瓶を使う場合、ただ小さな穴の開いているだけのニプルを使用すると『噛みこむ』動きではなく『吸い込む』動きになり顎の成長が促されません。できるだけ乳房からの母乳哺乳をしましよう。
様々な理由で乳房からの哺乳ができずに哺乳瓶から哺乳する場合には『咬合型ニプル』を使用しましょう。
『咬合型ニプル』は乳房哺乳に近い顎の動きになるように工夫されています。

~離乳開始~

  乳歯が無い時期

出っ歯にならないためには<唇>が閉じていることが大切です。
離乳食の最初はスプーンであげます。
下唇にスプーンで合図した後 上唇をおろしてきてスプーン上の食べ物をこそぎ取るようにして口の中に運びます。
こうした上唇の動きによって唇の筋肉がきたえられきちんと口を閉じられるようになります。
食べないからと言ってスプーンで口の奥に流し込むのは止めましょう。

  前歯のみの時期

舌の動きのトレーニング期です。
食べ物は舌や歯茎でつぶせるくらいの柔らかさにしましょう。
あまり柔らかすぎるとつぶさずに飲み込んでしまいます。
前歯で食べ物を噛みとって食べる時期です。
食べ物をあまり小さくしないで前歯で噛みとることを覚えさせましょう。
奥歯の生えていない時期に水につけた昆布やゆでた野菜スティクなど噛み切れない硬さのものを与えてガチガチ噛む練習をさせましょう。

(保護者が見ていて誤飲に気を付けてください。)

  奥歯がはえた時期

自分で食べる第一歩の手づかみ食べはとても大切です。食べ物を手づかみ食べできるサイズ形状にしてあげてください。
お水やお茶などを用意してしまうと食べ物を唾液とまぜて飲み込むのではなく、水分で流し込んでしまいがちです。
お水やお茶は食事の最後にあげてください。
水分を取るためにストロー付のコップを使いがちですが、ストローで吸い込む動作は顎の成長の妨げになります。
なるべくストローは使わずコップで飲むようにしましょう。

歯周病と全身疾患

糖尿病

歯周病は神経障害、網膜症、腎症、心筋梗塞、脳梗塞についで糖尿病の第6の合併症と言われています。
糖尿病の患者さんは歯周病にかかっている人が多く、重症化しやすいと言われます。また歯周病があると血糖コントロールが難しくなることがわかってきました。
歯周病で歯茎が腫れると歯周病菌は腫れた歯茎から血管内に入り込み全身へまわります。
歯周病菌のつくる内毒素はTNF-αという炎症性サイトカインの産生をうながします。TNF-αは血管内に流れ込み増加していきます。増加したTNF-αはインスリンの働きを妨げ、血管内は高血糖状態となり糖尿病を悪化させると考えられています。
歯周病になっている糖尿病患者さんの歯周病治療を行ったところ血液中のTNF-αが減少し、血糖値コントロールの指標であるヘモグロビンA1cの値が改善されました。

動脈硬化

動脈硬化は不適切な食生活や運動不足ストレスなどの生活習慣の他に 歯周病菌などの細菌感染も要因の一つと考えられています。動脈硬化を起こした血管の中のプラーク(動脈硬化の病巣)を調べると歯周病菌が検出されるというケースが日本でもアメリカでも相次いで報告されました。またアテローム性動脈硬化(コレステロールなどの脂質が動脈内膜にかゆ状に沈着したもの)の部分から歯周病菌が検出されているそうです。
歯周病菌は動脈内膜に動脈硬化を誘導する物質を産生します。その結果血管内に脂肪性沈着物がたまって血管壁が厚みを増します。血管壁が厚くなると血液の流れるスペースが狭くなり動脈硬化が進行していきます。

心筋梗塞

重度の歯周病では 歯周病菌が心臓の栄養血管である冠動脈から見つかる場合が多く見られます。冠動脈で動脈硬化がおこると狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患が発症します。

脳梗塞

脳の血管が直接詰まったり、心臓や頸動脈の動脈硬化でできた血栓や沈着物が脳血管に詰まったりして脳梗塞が発症します。動脈硬化を原因とする脳梗塞は歯周病とも関係があり、歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になりやすいと言われています。
動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞の予防には適度な運動、正しい食生活などの生活習慣の改善だけでなく歯周病の予防も重要です。

妊娠・出産

妊娠中は女性ホルモンの影響で歯茎の炎症を起こしやすく歯周病のリスクが高くなります。
妊婦さんが歯周病になると低体重児や早産のリスクが高まることが知られています。
これは口の中の歯周病菌がつくる菌毒素が血中に入り、胎盤を通して胎児に送られ胎児の健康な成長を阻害するほか、その毒素の影響で子宮の異常収縮が起きることが原因と言われています。
基本的には妊娠中であってもきちんと歯磨きをして口腔内を清潔に保てば歯肉炎は起こりにくく、起こっても軽度ですみます。

誤嚥性肺炎

日本人の死因の上位に肺炎があります。
食べ物や唾液を誤って飲み込んでしまう事(誤嚥)により発症する誤嚥性肺炎にも歯周病が関与しています。
誤嚥性肺炎の原因菌の多くは歯周病菌などの口腔内常在菌であることから、
口腔機能の低下によって食物や唾液とともに口腔内常在菌が誤嚥性肺炎を起こすと考えられています。
口腔内を清潔にたもつことで誤嚥性肺炎の発症を減少させることができます。

認知症

アミロイドβが脳の海馬を中心に蓄積し脳細胞が圧迫され死滅することでアルツハイマー型認知症が発症します。
マウスの実験で歯周病のマウスは歯周病でないマウスよりもアミロイドβ量が1.4倍多いことが判明しました。
また日本人のアルツハイマー型認知症の人60人と性別年齢の近い120人の健常者を比較した研究では自分の歯を半数以上失っているとアルツハイマー病を発病しやすいことがわかっています。
歯周病菌の内毒素の影響や噛む事による脳への刺激の有無が認知症にかかわっていると考えられています。
歯周病は口腔内だけでなく全身の健康にも深くかかわっています。
半年に1度は歯科で定期健診を受けましょう。
歯科医院でプロフェショナルによる歯石、歯垢除去をすること、自分できちんと正しい歯磨きをすることが歯周病の予防になります。
生活習慣の改善とともに口腔内環境の改善を心掛けて健康な毎日を過ごしましょう。

睡眠時無呼吸症候群

スリーマイル原子力発電所事故、スペースシャトルチャレンジャー号爆発事故、チェルノブイリ原発事故、関越自動車道の高速バス事故、これらの事故は睡眠時無呼吸症候群が原因の一つとされています。
大きな事故でなくても、私たちの日常生活にも危険はあります。睡眠時無呼吸症候群の人の居眠り運転のリスクはそうでない人の5倍も高いと言われています。
しかしながら、睡眠時無呼吸症候群は症状を自覚するのが難しいのです。

そこで 

セルフチェック
・しょっちゅういびきをかく
・肥満傾向がある
・顎が小さい
・高血圧である(高血圧の薬を飲んでいる)
・昼間の眠気で困ることがある
・夜間の睡眠が浅い、しばしば目が覚める
・いくら寝ても 朝疲れが取れていない感じがする
・しばしば朝頭痛がする
・飲酒していない日でも夜間息が止まることがある

等に思い当る人は睡眠時無呼吸症候群かもしれません。

 

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは『寝ている間に呼吸が止まる病気』です。
原因により

①  閉塞性睡眠時無呼吸

②  中枢性睡眠時無呼吸

③  混合性睡眠時無呼吸

の3種に分類されています。ほとんどの場合が閉塞性です。
普段(起きている時)の呼吸は意識をしないでおこなっています。入眠後に舌が喉の奥に落ち込むことと喉周囲の筋肉が緩むことで空気の通り道が狭くなります。狭い状態で息を吸うと音が出ます。これが<いびき>です。さらに舌が奥に落ち込み喉を塞いでしまうと<無呼吸>になります。10秒以上の呼吸停止を<無呼吸>といいます。<無呼吸>が1時間に5回以上あると『睡眠時無呼吸症候群』と診断されます。
確定診断のためには終夜睡眠検査(PSG)を行います。体にセンサーを着けて就寝し、寝ている間の無呼吸数、いびきの時間、酸素濃度の低下、脳波での睡眠レベルなどをチェックします。
自宅で簡易検査器を着けて行う簡易PSGもあります。

 

症状・危険因子

睡眠時深い眠りに入れず、起床時に熟睡感がない、だるい頭が重い、眠気が続くようになります。
呼吸が止まると酸素濃度が低下し血管が収縮するため脳梗塞、心筋梗塞、不整脈の危険も高まります。
また熟睡できない脳のストレスや酸素不足のストレスが血圧を上昇させ血糖値を上昇させることもあります。
首が太い、肥満、男性、扁桃肥大、喉が狭い、顎が小さい方に症状が現れやすいと言われています。
症状はいびき、無呼吸、中途覚醒、夜間頻尿、熟睡感欠如、起床時頭痛、日中眠気、倦怠感などです。
本人に自覚がない場合もあります。

 

治療

①  内科的 
・肥満のあるかたにはダイエットを指導します。
・無呼吸数が1時間に20回以上の方にはシーパップ(持続陽圧呼吸)療法を行います。

②  耳鼻科的 
・鼻づまりの解消(鼻閉解除)
・喉周囲の形状に問題のある場合(鼻中隔湾曲、扁桃肥大)には外科的手術を行うこともあります。

③  歯科的
顎が小さい、下顎後退傾向を示すかたには口腔内装置(マウスピース)による治療が行われます。

マウスピース

無呼吸治療用のマウスピースは歯科で作ります。
下顎を前方に出した状態で上下顎を固定するようなマウスピースをつくります。
内科や睡眠外来で睡眠時無呼吸症候群の診断を受け、歯科への紹介状があれば歯科での保険治療が可能です。
装置により下顎を前方固定できなかったり、固定源となる歯が少なかったり、
顔面形態異常が強すぎる場合などマウスピースが使えない場合もあります。

・口腔周囲筋・舌トレーニング

舌筋力の虚弱や低位舌のために舌後部(舌根)が気道を塞いでしまっている場合は舌の筋肉トレーニングをすることで舌による気道閉鎖を改善できます。

・下顎狭小の場合は下顎を前方移動する手術を行います。

★アルコールは無呼吸数を2倍にしますので節酒が必要です。

★睡眠薬や抗不安薬は筋弛緩作用があり無呼吸数を悪化させますので使用には注意が必要です。
セルフチェックに該当した方やご家族に心当たりのある方は睡眠外来、内科、歯科等で相談してみましょう。

鼻呼吸と口呼吸

~ ① 口呼吸チェック ~
次にあげる項目をチェックしてみましょう。

□ 気が付くと口唇が開いていることがある

□ いびきをかく

□ 目が覚めたとき、口の中が粘つく

□ 目が覚めたとき、唇が渇いている

□ 目が覚めたとき、のどがヒリヒリする

□ 目が覚めたとき、たんが絡んだ感じがする

□ 目が覚めたとき、口臭が強くなる

□ きちんと歯磨きをしても前歯が着色する

□ きちんと歯磨きをしても歯茎から血が出る

□ 口内炎ができやすい

□ 風邪をひきやすい

□ 歯並びがわるい(出っ歯)

思い当るところがあれば鼻呼吸ではなく、口呼吸になっているかもしれません。

 

~ ② 鼻呼吸を目指そう ~

鼻から吸い込んだ空気は暖められ、細菌やほこりが濾過されて直接のどに入っていかないようになっています。
口には鼻のような機能がなく、口から吸い込んだ乾燥した冷たい空気や細菌は直接のどに入っていきます。
そのため口呼吸では風邪をひきやすくなります。
口の中は唾液があって湿っています。唾液には抗菌作用のあるリゾチームという物質や、ムチンいう歯肉や舌口の粘膜を保護する物質が含まれています。
長期間口呼吸をつづけていると唾液が蒸発して口やのどの粘膜が乾燥し炎症を起こします。
きちんと歯磨きをしても歯肉炎や歯周病になってしまうのは乾燥が原因の一つです。
赤ちゃんの頃は鼻腔から気道までがほぼ一直線で 鼻で息をしながらおっぱいをのんでいます。
みんな初めは鼻呼吸だったのです。
離乳食が早すぎたり鼻がつまる病気にかかったりすることがきっかけで口呼吸になってしまいます。
歯並びは唇や頬の筋肉の力と舌の筋肉の力のバランスで位置が決まります。
口呼吸では唇が常に開いています。舌が歯を外に押す力に対して唇が歯を押し返すので出っ歯にならないのですが、唇が開いていたままではだんだんと出っ歯になっていきます。頬のラインもしまりがなくなります。
口呼吸に気付いたら鼻呼吸にもどしましょう。
鼻が詰まっていると鼻呼吸ができず口呼吸になります。鼻づまりは耳鼻科を受診し極力治しましょう。
開いたままになった唇の筋力は弱くなっています。口唇の筋肉を鍛える方法や器具もあります。
気になる方はご相談ください。